五臓六腑

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一兵卒と諸々


 ロビーは、つい先日十五歳の誕生日を迎えた。
 この国では、その年になると王城で働き口を探すことができる。
 ロビーの父親はそこそこ名の知れた剣士であり、平民の出ながら中佐の位に就いている。それなりのコネを利用したのは否定できないが、軍に志願して試験を受け、幼い頃から父親に仕込まれた剣の腕で、実技もなんとか合格出来た。
 しかし、まだ成人も迎えていない彼は、兵士としては下っ端も下っ端。見習いの身分である。
 
 彼がまず配属されたのは、王城の大門の警備である。所謂、門番だ。
 もちろん、ここでも彼は一番の新米であり、元来の引っ込み思案な性格も手伝って、最初の日などは緊張でがちがちだった。元々、そんな弱気で頼りない息子を心配した父親に、ロビーは半ば無理矢理軍入りさせられたようなものだ。
 彼は本当は、絵描きになりたかった。
 絵を描くことが大好きだったし、祖父がまたそこそこ名の知れた画家なので、そっちにもちょっとしたコネがあったのに。

 門番と言っても、何も攻めてくる敵がいるわけではない。仕事としては、城で働く者の出入りの管理と、中で消費される商品の納入業者の身分証確認が主である。
 市井においては、確かに時々強盗や殺人などの凶悪事件も起こるが、それらは毎回軍管轄の治安部隊によって速やかに犯人は確保され、法に基づきしかるべき刑に処されることとなり、彼らの活躍が抑止力になって、国内の治安は全体的に見てすこぶるいいと言えるだろう。
 また、政治的にも現在この国は非常に安定している。
 王族の婚姻も一般国民と同じく一夫一妻が基本であり、現王は思慮深くお優しい王妃様お一人を大事にされ、後宮問題など女の愛憎渦巻く面倒な話はない。立派な王子が三人もいらっしゃって世継ぎの心配も皆無であり、既に一の王子が王太子として議会にも国民にも認知され、下のお二人の王子は兄上を深く敬愛し、来る彼の治世を支える基盤作りに努力を惜しまない。
 更に、この国は辺境にまで遠く名を馳せる大国であるが、ここ数百年内外共に大きな争いもなく、同じく大国である隣国とも友好的な関係にある。両国の王族間の親交も厚く、現に今、隣国の末姫が留学と称して城に滞在していらっしゃる。

 本来なら、ロビーのような末端たる見習い兵が、高貴な王族の方々にお目にかかる機会など、滅多にないことだ。
 政務でお出かけになられる際に、馬車の外からご挨拶申し上げたことは幾度とあったが、窓を開けて門番達にまで労いお言葉を下さっても、気弱なロビーは恐れ多くて拝顔することも叶わない。国王ご夫妻や王子樣方の素晴らしい噂は常々耳に入ってくるし、下働きの間では隣国からのお客様の話題で持ち切りだったが、全てはロビーとは縁のない雲の上のお話ーーーーの、はずだった。

 ところが

「ねえ、ロビー、聞いているの?」
「……はい、もちろんです」

 今、ロビーが配置されている大門の傍ら、大きな岩の端にちょんとつま先立って塀の上辺に頬杖を付き、つまらなさそうに城下の町並みを見下ろしているのは、ふわんふわんの砂糖菓子のような存在だ。
 長く真っ直ぐな白金色の髪は、天から降り注ぐ光のように神々しく、長い睫毛に縁取られた瞳は吸い込まれそうに凪ぎいだ水面の色。円やかなほっぺは薔薇色で、可憐な花びらのような唇が紡ぐのは、愛らしい小鳥のさえずりのように甘い声。小さな身体を包むのは、濃紺のワンピースと白いエプロンという、王城の侍女の一般的なお仕着せであるが、彼女を見て侍女だと思う者は、まずいないだろう。何と言っても、童顔と言って誤摩化すのも無理な程、あまりにも幼気なのだ。
 先にも述べたが、王城で仕事を得られるのは十五歳を迎えた者のみ。侍女になるにも、もちろんその歳を越えていなければならないし、そもそも見習い侍女と正規の侍女とはワンピースの色が異なる。
 見習いに支給されるのは、初々しさが可愛らしい薄水色のもので、一年の見習い期間を終え侍女頭の太鼓判をいただけてやっと、晴れて正規の侍女として胸を張れるのだ。それは、見習い兵士であるロビーにも同じことがいえ、彼も一年門番の仕事を勤め上げ、直属の上司である中佐殿の許可をもらえれば、晴れて正規の兵士として扱われるはずである。
 侍女も兵士も一年間問題なく勤しめば、成人である十六歳を迎える時に、正式に仕事を得られる寸法になっている。

 ちょうど今は人々の出入りが一段落して、昼間では一番大門が落ち着いている時間帯だ。
 ここ数日程、この時間になると必ず、門番の屯所には可愛らしいお客様がやってくるようになった。
 本人は、侍女に扮してお忍びで城内を歩き回っているつもりだろうが、門番の長である厳つい顔の老兵士も、ロビーの兄貴分としていろいろ親切にしてくれる、五つ上と三つ上の先輩兵士達も、その他彼女の脇を通りかかる人々も皆、その正体に気付いていないはずがない。もちろん、ロビーだって、そのどう見ても年下の、絶対に城に上がれる年齢に達していないだろう風貌で、生意気にも正規の侍女のお仕着せを纏っている少女が、本来なら自分が拝顔することも叶わないような身分であると、分かっていた。

「あの……姫さ」
「ロビー」
「あ、いや……アミー様。もうそろそろ、戻られた方が……」
「いやよ」

 姫様と言いかけたロビーが、慌てて訂正したアミーことアミーリアこそ、隣国からの大切なお客様。現在、一年のお約束で当国に御留学中の、御年十三歳になったばかりの正真正銘のお姫様だ。
 隣国もまた非常に安定した治世の元、国王夫妻は当国に並ぶ優秀な王太子殿下を筆頭に、三人の王子と三人の王女を儲けられ、こと年の離れた末の王女に対しては、父王は勿論のこと兄姉殿下の溺愛たるや凄まじいと、他国にまで漏れ聞こえる程の仲睦まじさ。彼らのあまりの甘やかしように、末娘が我がままに育つことを憂えた王妃様が、彼女を隣国に一人社会勉強に出そうと言い出した時には、王宮内は世紀の大騒動へと発展したらしいが、妻に頭が上がらない王の決断で、アミーリアはこの国へとやってきた。

 ロビーは、こんなに可愛らしい女の子を、今まで見たことがなかった。妖精や天使というものが実在するなら、きっとこういう姿をしているに違いないと思う。
 絵を描くのが好きな少年は、一度でいいから彼女をモデルに絵を描いてみたいと、大それた思いを抱いていた。口に出して言う勇気はないが、心の中で思うだけなら自由だ。

「皆さん、心配なさっているのでは、ないですか?」
「だってジーヤが、いちいちうるさいんだもの」
「はあ……また、爺や様ですか……」

 アミーリア姫様は、母王妃様がご心配なさる程、我が侭な少女に育ってはない。
 勉学にも一生懸命励んで熱心であらせられるし、作法の授業も教師が太鼓判を押す程完璧だ。食事の好き嫌いもなさらないし、こちらの国で付けられた侍女達に無理を言うこともなく、実にお優しく接していらっしゃるらしい。
 ただ、幼さ故に時々元気が有り余ってか、淑女らしくないおてんばな行動に出て、周りのものを慌てさせることもあるが、そんなのは些細なことだろう。彼女の子供らしい行動に、眉を潜める者など居はしない。それを証拠に、お忍び用にサイズの小さい侍女服を用意したのは、普段は厳しいと恐れられる侍女頭であろうし、明らかにアミーリア姫と分かる小さな侍女が王城を歩き回っても、皆気付かない振りをしつつ、こっそり危険がないかと注意を怠らない。むしろ微笑ましく見守っていると言って良い。
 そうして、自分は上手く変装できていると思い込んでいる可愛い姫様は、いつも大門の際までやってきては、小一時間程塀の向こうの町並みを眺めつつ、年の近い気弱な少年兵士に愚痴を垂れるのが、ここのところの午後の日課となっていた。

 アミーリアの愚痴の対象は、大体はジーヤに始まりジーヤに終わる。ロビーは、彼女が唯一国から連れてきた、白髪の上品な紳士を思い浮かべた。
 爺やと呼ばれる彼は、姫が生まれた時からの侍従であり、祖国の兄姉殿下達の信頼を一身に受けて同行した、姫の忠実な僕である。厳しくも深い愛情で接し、常に高い秩序を持って導いてくれる爺やに、アミーリアも絶対の信頼と親愛を寄せており、彼女がホームシックで寂しがらないのも、彼の存在のおかげだろう。
 しかし、王家一族の宝珠とも言える末の姫様を心配するあまり、いろいろと口煩くなってしまうのは致し方ない。
 それが、アミーリアには時々窮屈でならないらしく、わざわざドレスを着替えて王宮の外れたる大門までやってきては、ぶちぶちとロビーに不満を聞かせては、ストレスを発散させるのだ。

「ジーヤったら、マーシーとお茶するだけで、怒るの」

 マーシーとは、十七歳の第三王子マーシュリア。金髪碧眼の見目麗しい、絵に描いたような王子様だ。
 年齢的に将来アミーリアとの婚姻もあり得ると噂される方で、姫の方も実の兄のように懐き、とても仲が良いらしい。
 素晴らしくお似合いの二人だと思うが、爺や殿は反対なのだろうかと、ロビーは首を傾げた。

「それに、せっかく国王様がお膝にのせて下さったのに、いけないと言うのよ」

 普段はどちらかというと厳しく凛々しい国王が、姫の前では表情を緩めっ放しであったり、気品溢れる王妃様も、彼女を着せ替え人形にして、毎日とても楽しそうでいらっしゃたり。三人の子供が全員男子だったので、国王夫妻はアミーリアを実の娘か孫のように可愛がっているらしい。
 しかし、親しき仲にも礼儀ありと言うように、他国の国王とのあまりに気安過ぎる触れ合いを、爺や殿は黙って見過ごせなかったのだろう。

「昨日は、厩舎に子馬を見に行っただけなのに、怒ったわ」

 アミーリアが厩舎で馬糞に躓いて転び、膝小僧を盛大に擦りむいた時は、掃除を怠っていた厩舎係の首が、文字通り身体から放れて飛びそうになったという話は、記憶に新しい。
 姫が自分の不注意だと必死で庇ったおかげで、厩舎係は厳重注意と三月の減俸で済んだが、危うく職も命も失うところだった。なによりも、血の滲んだ膝の痛みに涙を懸命に堪える幼い姫に、心を痛めない者はいなかった。
 心配のあまりに口煩くなってしまう爺や殿の気持ちが、若いロビーにだってよく分かる。

「爺や様は、アミー様を思って……」
「ロビーは、いつもジーヤを庇ってばかり! 二つしか年が変わらないのに、私の気持ちを分かってはくれないのねっ!?」
「あっ、いえっ、その~……。すみません」

 唇を尖らせて、拗ねたように睨みつける少女に、ロビーはぽりぽりと頭を掻きながら苦笑を零す。
 最初は、高貴過ぎるお客様の相手に恐縮するばかりだった彼だが、このとんでもなく可愛らしいお姫様は、一度足りとて下々の者に身分をひけらかす事も、彼らに無理を言う事もしないのだ。今だって、塀の向こうの町並みを羨ましそうに眺めながら、門を通って遊びに行かせろとは言わない。
 自分の賓客としての立場と、一兵士にとってその言葉に逆らうのも従うのも酷な事が、ちゃんと分かっているのだ。爺や殿が口煩いのも、自分を深く思ってのことだと理解しているから、彼に逆らったり無碍にしたり出来ないで、けれど若さ故に心に溜まる鬱憤を、年の近い友達に聞かせにやってくる。
 いつしかロビーは、愛らしいお姫様が自分に懐いてくれるのがとても嬉しく、恐れ多くも幼い妹のように思い始めていた。

「ロビーのおうちは、遠いの?」
「あ、いえ、ここから見えますよ。ほらあの、緑の屋根の家です。赤と橙色の屋根に挟まれた」
「大きいお家ね。あの辺りで、一番背が高い」
「母が下宿屋をしているのです。城詰めの兵士も地方出身者が何人か住んでいますよ。隣の赤い屋根は、叔父夫婦がやっている小料理屋で……」

 アミーリアは、町の様子をいろいろと聞きたがった。ロビーはせがまれるままに他愛ない質問に答え、そんな二人の姿を門番の先輩兵士達が温かく見守るのがいつもの光景。
 しかし、今日は全てがいつもと同じようにはいかなかった。
 自分以外の兵士達が、突然とある一点に視線を釘付けにされたかと思うと、次いで揃って全員びしりと背筋を正し、緊張に顔面を強張らせたことに、アミーリア姫と並んで町並みを眺めていたロビーは、その時気が付かなかった。

「私……お店って、行ったことないの。お買い物も……したことがない」
「アミー様……」
「行ってみたいなぁ……」
「………」

 それは、遊びたい盛りな年頃の、少女の本音に違いない。けれど、己の立場を弁えた彼女は、いつもそれ以上の言葉を噤む。本当は、門を通して町に連れて行ってとロビーに言いたいのに、それが彼を困らせることと分かっているから、絶対に強請ったりしない。
 ロビーも、出来る事ならアミーリアに城下を案内してやりたい。異国人である彼女に、誇らしき祖国の素晴らしさをもっと知ってもらいたい。活気溢れる市場の様子を肌で感じさせてやりたいし、素朴だけれど優しい味わいの叔父の料理だって食べさせてやりたい。けれど、万が一の有事の際に、姫を守りきれる自信がない自分にその資格があるとは思えないので、いつもこの話題になると、二人は目を合わせずに沈黙するのだ。
 ロビーは、今日も己の不甲斐なさを申し訳なく思いながら、一つ溜め息を吐いた。

 背後から声が掛かったのは、その時だった。

「いい子にしていれば、連れていってやると言っただろう」

 低く重厚な美声と、背筋に氷を押し当てられたかのように突き刺さる冷気に、ロビーはわけも分からぬまま硬直した。
 元来気弱な彼に、振り向くのさえ恐ろしくてままならなくさせる誰かが、背後に立った。

「ジーヤ!」

 そんな連れの様子に気付く事なく、白金の髪をふわりと宙に舞わせて振り返ったアミーリアの言葉に、ロビーもつられたように首を動かして、今度は思考まで硬直しそうになった。

 ジーヤ?
 爺や?
 侍従長?

 いや、自身の背後におわす御人の印象は、白髪の老紳士とはほど遠い。
 短く整えられた赤毛は燃えるように雄々しく、切れ長の琥珀色の瞳が鋭い美丈夫は、全ての兵士にとって憧れと畏怖の対象である我国軍の最高司令官。
 冷たい金色でロビーを見下ろし、剣を持つのに慣れた大きな掌をアミーリア姫に差し出したのは、この国の第二王子ジーニャリア殿下であった。

「せっかく、ティータイムに合わせて仕事を切り上げたというのに、俺を無視して姿を眩ませるとは困ったお姫様だな」
「だって! ジーヤは、いつもお説教ばっかりだものっ!」

 優雅な所作で伸びてきた手を拒み、アミーリアがロビーの背中に縋るようにして隠れると、成長期まっただ中の少年よりもまだずっと高い位置にある瞳が、すっと剣呑に眇められた。

「あれもだめ、これもだめって、ジーヤはだめばっかり!」
「それは、お前の危機感が薄過ぎるからだ」
「……馬小屋のことは、足下を良く見ていなくて不注意だったって反省しているけど、後は何にも危ないことなんてなかった」

 がちがちに硬直して、もはやただの頼りな気な壁に成り下がり、アミーリアの盾にもならないロビーを挟んで、凛々しい軍人王子と妖精のような王女が言い争う。

「マーシーは、珍しい焼き菓子を持ってきてくれたのよ。一緒にお茶をして、なにがいけなかったの?」
「マーシュリアの手の早さを、お前は知らないだろう。あいつの笑顔ほど、胡散臭いものはない」
「国王様は、お父様よりがっしりとしていて素敵だった。遊んでいただけて、嬉しかったのに……」
「助平親父の膝に乗せられて、喜ぶやつがあるか」
「生まれたての子馬なんて、見た事なかったの。とっても可愛かったわ」
「母馬は気が立っている。軽く蹴られただけでも、お前の肋骨などひとたまりもないぞ」

 他にも、やれどこそこの次期公爵からのプレゼントを黙って突き返したと姫が抗議すれば、王子は下心が見え見えな贈り物に惑わされるなと返し、乗馬に誘ってくれた従弟殿下を何故突然僻地に出張にやったのかと問えば、賓客をエスコートするに見合う乗馬の腕があるのかどうか試してやったのだと答える。
 それらは、どう聞いても痴話げんかに他ならなかった。
 見た目は、王族らしく双方共に大変整っていて、得意の絵に描いて残したいといつものロビーなら思うところだが、如何せん間に挟まれるのは非常に居心地が悪い。
 ロビーは視線で先輩兵士達に助けを求めたが、彼の救出に割り込める強者は一人として存在せず、ただ哀れみと同情と罪悪感の織り交じった視線だけが返ってきた。


 その後、拗ねたように口を尖らせたアミーリアに焦れ、強引に抱き上げて連れ去る司令官殿の背中を見送ったロビーは、自分が如何に愚鈍な人間だったのかを思い知らされて、悶絶した。
 彼がずっとアミーリアに愚痴を聞かされながら、勝手に同情したり同調したりしていた相手は、実は思慮深き上品な老紳士などではなく、鬼神の如く強く厳しく雄々しい軍人の中の軍人。少女の口から零れる“ジーヤ”が指すのは、祖国より彼女に付き従ってやってきた爺やではなく、この国のちょうど二十歳を迎えられた第二王子殿下。
 “ジーヤ”との呼び名は、ジーニャリアという名前からアミーリアが付けた、この世でただ一人彼女だけが口にするのを許された、特別な渾名だったのだ。
 そうしてロビーが聞かされたのは、アミーリアと将来の婚約が噂される第三王子よりも、その兄王子の方が周囲が驚く程に彼女を溺愛していて、既に何度も姫の父である隣国王に婚約を打診しているという事実だった。
 かの国からは、アミーリアを溺愛する兄姉殿下達に「まだ嫁にやるには早過ぎる」との猛反対にあって、色よい返事は貰えていないらしいが、ジーニャリアには諦める気などさらさらない。
 当のアミーリアの方も、恋だの愛だのを理解するにはまだ少し年齢が足りないが、優男な兄王子達とは真逆の肉食系なジーニャリアが新鮮で、何と言っても逞しくて誰よりも強い彼を素敵な人だと思っているようだ。
 優しい友達あるいは兄のように慕っている、気弱で穏やかなロビーや、線が細く王子様然としたマーシーことマーシャリア王子とは、姫にとって“ジーヤ”は一線を画した人物であった。


 それからも、アミーリア姫はたびたび侍女に窶してロビーの元にやって来た。
 そして、やはりジーヤことジーニャリアの愚痴を零しては、一段落した頃に本人がやってきて、王宮に彼女を連れ帰るというパターンが定着してしまった。
 その度に、謂れのない剣呑な司令官殿の視線に晒されるロビーは哀れだったが、人間というのはそのうち慣れるてくるものである。
 気弱な少年だった見習い兵士は、一年が経って試用期間が終わる頃には、何事にも動じない肝の据わった男へと成長していた。
 

 成人を迎え、正規の兵士として認められたロビーの職場は、そのまま大門となった。
 今日もまた、午後のお茶の時間になると、妖精のようなお姫様がやってくる。


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