五臓六腑

このサイトに掲載されている小説及びイラストの著作権はくるひなたにあります。無断での引用、転載、配布など固く禁じます。

蔦姫の罠1


 とんとんと、扉をノックする音が聞こえた。
 部屋の主に代わってそれに応対したのは、扉の際に控えていた皇帝陛下の第一騎士ジョルト・クル・オルセオロ公爵であり、つまりはこの部屋は、当代の皇帝陛下ルドヴィーク・フィア・グラディアトリアの執務室なのである。
 最強の騎士とうたわれながらも、誰よりも穏和な顔つきのジョルトが開いた扉から、お茶の用意を乗せたワゴンを押して入ってきた人物を見て、それまで疲れたような溜息を吐いていた皇帝ルドヴィークは息を飲んだ。


「ーーーーーっな!?」

 大声を上げそうになった己の口を咄嗟に塞ぎ、これは夢か幻覚かと疑うように、目を見開いてまじまじとその人物を見つめた。


 身に付けているのは、何の変哲もない、王城で働く侍女のお仕着せである。
 襟と袖口だけ、白い生地に上品なレースの施されたワンピースは、膝下丈の深い紺色。
 その上に、フリルをたっぷり使った白いエプロンが重ねられている。
 踵の低い履き物も勿論侍女の支給品であり、艶と伸びのある革製の黒い靴は履き易いと評判で、ぽちっと控え目に付いたリボンが可愛らしい逸品だ。

 皇帝付きの侍女らしく、優雅な足取りでワゴンを押して入ってきた彼女の肩の上で、そこに届くか届かないかの長さのふわふわの黒髪が、柔らかく揺れた。
 グラディアトリアだけではなく、この大陸においては非常に稀だとされる、黒髪。
 それを携えている人物といえば、今ルドヴィークが知っている限りでは、長兄ヴィオラント・オル・レイスウェイク大公爵の奥方、スミレ・ルト・レイスウェイクただ一人であった。

 現在、ルドヴィークは皇帝としての客人を迎え、ソファに向かい合って応対の最中である。
 彼は、持っていた書類を客人に手渡し気を逸らせると、出来るだけさり気ない雰囲気を装い、少し離れた位置でお茶の用意を始めた侍女に近付いた。
 そして、本当は怒鳴りつけたのを必死に抑え、小さな声で口火を切った。


「一体、どういうつもりだ。ーーーースミレっ!」

 珍しい黒髪の持ち主とは、やはり長兄の愛妻にしてルドヴィークの義理の姉となった、菫そのひとであった。
 客人に背中を向けた状態をいい事に、こめかみに怒筋を立てて詰め寄ってきた皇帝を、ふわんと緩やかに曲線を描く黒髪と、その上に乗せたヘッドドレスを揺らせ、正直身悶えしそうな程超絶に愛らしいメイドさんは、首を傾げた。
 それから、上品に両の口端を引き上げて笑みを作ると、彼に向って鈴の鳴るような声で答えた。


「宰相クロヴィス様の命により、本日一日、陛下のお側にお仕えすることになりました」
「‥‥‥‥‥‥はあ?」

 一体全体どういうことだ。
 訳が分からない。
 クロヴィスの差し金だという時点で、もう絶対、碌でもない。

 そう思いながら、混乱に豪奢な金髪を掻き回したくなったルドヴィークを、背後から呼ぶ声があった。



「おい、ルド。この値段、わしとしては少々納得しかねる」


 けして大声ではないのに、良く響く美声には威厳があり、無視出来ない重厚さがあった。
 ルドヴィークは舌打ちしたくなるのを懸命に抑え、長兄を見習って身に付けた冷静さを纏い直し、声の主に向き直った。


 皇帝自ら手渡した書類をひらひらと揺らし、皇帝を愛称で呼びつけたその客人は、真っ直ぐな亜麻色の髪を背中に流し、濃い金色の瞳を少々不機嫌に眇めながら、皇帝の執務室のソファに堂々と足を組んで腰掛けている。

 フランディース・ロ・パトラーシュ

 そのひとは、コンラートとは反対の位置でグラディアトリアと隣接する、大国パトラーシュの現皇帝であった。


 やはり皇族らしくひどく整った容貌の彼は、ルドヴィークの長兄であり先代皇帝である、ヴィオラントと同い歳。
 グラディアトリア・コンラート・パトラーシュの三国は、長年において友好的な関係にあり、それを維持継続する為にも皇族間の交流は盛んで、父皇帝の崩御に伴い二十歳で即位したフランディースも、コンラート王ラウルやその王兄ルータス同様、幼少時代にグラディアトリアに留学経験がある。
 グラディアトリアは、三国の真ん中に位置する特性上、両隣国からの人の流れが多く、それがこの国の文化の発展に繋がったともいわれている。
 コンラートが農業大国であるのに対し、パトラーシュは埋蔵資源が豊富で、燃料として利用される鉱石や、装飾に重宝される宝石の原石を多く産出する資源国である。
 グラディアトリアはというと、農作地にも資源にもそれほど恵まれていない土地柄、逆に各分野における加工技術に秀でる事により、隣国から輸入した原料を他国の真似出来ない製品へと加工し、それをまた輸出するという商業ルートを確立していた。


 こいこいと、気安く手招きするフランディースにとっては、新しい隣国皇帝は赤子に近い年齢から知っている相手であり、どこか弟分となめてかかっている部分が感じられる。
 それが、正直ルドヴィークには腹立たしく悔しく、少なからず彼に対して苦手意識を感じる要因になっている。
 こちらの気も知らないで、侍女に徹してお茶の用意を始めた菫に、まだまだ言いたい事があるのを何とか飲み込んで、ルドヴィークは客人の待つソファに戻らざるを得なくなった。


「‥‥‥‥どう納得いかないのですか。こちらは祝いも兼ねて無償で差し上げると申し上げたのに、自分からの贈り物としたいからそれでは困ると仰ったのは貴方じゃないですか。仕方なく、原料費のみで見積もりを出したのですよ。これ以上面倒くさい事は仰らないで下さい」
「分かってないな‥‥ルドは。だからお主は、まだ子供だというのだよ」

 はあ、と溜息混じりに吐かれた言葉に、カチンときたルドヴィークは、まだやはり彼の言う通り子供なのだろう。
 しかし、これも国同士の貿易に関わる正式な会談であれば、ルドヴィークとて終始冷静に対処できる自信がある。
 だが、今回のやりとりというのは、皇帝同士というより個人の間での話であり、しかも

「‥‥‥そもそも、一体何回目の結婚式を挙げようというのですか、フランは」
「うん? さあ、数えていないから分からんな。何回目だったかな?」
「‥‥‥‥五十三回目、ですよ。ああもう、ほんと、オメデトウゴザイマス!」
「何だね、そんな心の籠っていない祝辞はいらぬぞ」

 パトラーシュの当代皇帝の女好きは有名で、彼は政治的な意味合い抜きで後宮を充実させており、貴賎に関わらず気に入った女性は次々と召し上げている。
 その上、一人一人につき、いちいち盛大な結婚式を挙げるので、目出度さも回をおう毎に激減である。
 在位八年の内に、五十回以上の結婚式。
 二ヶ月に一回以上の割合で執り行われる皇帝の嫁取りに、パトラーシュの国民は既に慣れっこになっていて、最近では市井が特にお祭りムードになることもなくなっているという噂だ。
 そして、来月挙式を予定しているフランディースの五十三人目の花嫁に、彼がグラディアトリアの技術で作られた豪華な首飾りを贈りたいと言ってきたのだ。
 ルドヴィークの方は、個人的な祝いとして無償で譲ると主張したのだが、フランディースがどうしても自分からの贈り物にしたいと言い張るので、仕方なしに気持ち程度の値段を乗せた見積書を渡したのだ。

「値段をまけさせた物など贈られて、女が満足するとでも思っているのか? 政治的な気遣いも駆け引きも余計であるから、個人的にお主に頼んでいるのではないか。正規の値で請求してくれ」
「はいはい」
「何だね、そのおざなりな返事は。“はい”は一回と、お主の兄上は教育しなかったのか?」
「‥‥‥兄上は、関係ないです」

 フランディースが、根は悪い男でないのは分かっている。
 ルドヴィークも、幼い頃勉学の合間に遊んでくれた、良き兄貴分としての彼の思い出も無くはない。
 女性に対しては、移り気で不誠実な面も無いとは言えないが、パトラーシュの後宮に入った女が不幸になったという話は今の所聞かないので、それなりに上手くやっているのだろう。

 ルドヴィークがもう何回目になるのか分からない溜息を吐いた時、「失礼します」と小さく声を掛けて、相変わらず侍女に扮した菫がテーブルにカップを置いた。
 香しい紅茶の香りに誘われ、ルドヴィークは直ぐさまそれに手を伸ばした。
 大陸一上手い紅茶を飲ませると評判の、老舗茶葉屋フリードに弟子入りしたと聞く手腕はなかなかで、口に含んだ途端若き皇帝の頬は微かに緩んだ。
 ところが、目の前の客人の吐き出した次の言葉に、もう少しで紅茶を盛大に噴くところだった。


「兄上といえば、ヴィオラントが妻を娶ったそうではないか」
「ーーーーーっ‥‥!!」

 その“ヴィオラントの妻”は、紅茶のおかわりを申し受ける為に、脇に立って控えている。


「我が国の諜報部員が話を仕入れて来た時は、何の冗談かと思ったものだが、本当の事だったのだな。そもそも、彼もみずくさい。知らせてくれれば、何を置いても祝いに馳せ参じたものを」
「‥‥‥諜報、ねぇ‥‥‥。兄上は、政治の表舞台と関わるのを、極力避けていらっしゃるので」
「わし個人、友として参じたかったというのだ。まったく、友達甲斐のない男だよ」

 物憂気な溜息を吐いて瞳を伏せたフランディースは、優美な指を伸ばしてテーブルの上のカップを掴み、生粋の皇族らしく優雅な仕草でそれに口を近づけた。
 そして、まずは香りを吟味し「おや?」というように瞳を開き、それから紅茶を一口含んで飲み込むと、今初めてその存在に気付いたとでもいうように、お茶を入れた侍女に視線を向けた。

 そして、その濃い金色の瞳にきらりと光が溢れたのを目の当たりにして、ルドヴィークは物凄く嫌な予感がした。



「――――お主。そこな侍女、こちらに参れ」

 ーーーーーやっぱりっ‥‥!

 ルドヴィークは頭を抱えたくなった。

 隣国パトラーシュの皇帝フランディースは、先にも述べた通り、女性という生き物が大好きだ。
 年寄り子供に関わらず、女性には分け隔てなく優しく紳士な、最高のフェミニストでもある。
 それでも妻にしようという相手は、やはり自身の射程範囲内の年齢で、しかも美しい者を好むのは人間の性であろう。

 つまりは、多少年齢より幼く見えるとはいえ、件の侍女、いや菫が、パトラーシュの目に留まらないわけがないのだ。

 身内の贔屓目を差し置いても、彼女の秀でた魅力を無視できる男がいるとは思えない。
 精巧なドールのような壮絶な可憐さで、老若男女を虜にする魔性のオーラが、侍女のお仕着せごときで隠せるはずがあろうか。
 加えて、この大陸では珍しい黒髪と、稀なるアメジストの輝きを持つ瞳が、彼女の印象を強烈に脳に焼き付けてくる。


「お呼びでしょうか」

 高慢な態度で呼びつけたフランディースに、普段の彼女ならばツンとそっぽを向いて「やなこった」と宣いそうなものを、いまだ侍女を演じ続ける菫は、従順にソファの側までやってきた。
 儚げな甘い声は、侍女の仕事にまだ不慣れな様子を醸し出し、不安そうに揺れる瞳は、演技であると分かり切っていても、大いに庇護欲をそそられる。
 彼女の本性を知っているルドヴィークでさえそうなのだから、菫を見たまんまの可憐であどけない少女だと思っているフランディースなど、ひとたまりも無い。

「‥‥‥なんと、愛らしい。ルドヴィーク、これはお主の侍女か」
「‥‥‥え?‥‥え~‥‥ええ、そうです」

 傍らに立って小首を傾げた菫を、感嘆の溜息と共に引き寄せたフランディースに尋ねられ、どう答えたものかと戸惑うルドヴィークに、菫本人が頷けというように視線を寄越して来たので、彼は不承不承ながらもそれに従った。

「黒髪とは珍しい。何処の国の出だ? 皇帝付きの侍女にしては少々幼いようだが、それなりの後見があると見える」
「‥‥え~‥はあまあ、その辺の事情は、ご説明致しかねます‥‥」

 後見といえば、その娘の後ろには、レイスウェイク大公閣下だとかシュタイアー公爵だとか、グラディアトリアの超大物貴族が濃密にくっ付いてる。
 ルドヴィークとしては、そう声を大にして伝え、フランディースが馴れ馴れしく握り締めている菫の手を奪還したいのはやまやまだが、彼女に侍女の真似事をさせている首謀者は、当代の宰相リュネブルク公爵であるという。
 彼の思惑が分からない以上、菫の身分をここで明かしてしまってよいものかどうか、判断しかねるのが現状だった。

 しかし、そもそもフランディースの方は、始めから菫の身分に頓着するつもりはないようで、答えを濁すルドヴィークにそれ以上問い質す事も無く、それよりも側に引き寄せたまだあどけなさを残す少女を観察するのに忙しいらしい。
 彼の美貌に至近距離で見詰められれば、どんな美しい女も頬を赤らめ瞳を潤ませ、期待に胸を膨らませるものだったが、残念ながら、普段から夫の類い稀なる美貌を見慣れている菫は、例外であった。
 鼻先がくっ付く程近付いても、少女の頬は元々の愛らしいピンク色から変化することなく、無垢なままの瞳で真っ直ぐにフランディースを見つめ返してくる。
 それがまた新鮮で、更に彼の興を誘った。

「お主、国から出た事はあるか?」
「はい。ご縁があって、コンラートに伺ったことがございます」
「そうか。コンラートも良い国だがな、我がパトラーシュも素晴らしい所だぞ」
「‥‥‥‥フラン。どういうつもりだ?」

 明らかに菫を口説き始めた客人を、ルドヴィークは半眼になって睨みつけた。

「どうもこうも、一目惚れというやつだ。ああ、そうだ、贈り物をくれるというなら、是非この娘を譲ってくれぬか?」
「ーーーっな!? スミレは物じゃないぞっ! そんなことできるかっ!!」
「スミレという名か、変わった響きだな。しかし、何とも言えず愛らしい娘だ。侍女にしておくには、惜しい。わが王城の一番よい部屋に迎え入れようではないか」
「ーーーあなたはっ! 来月既に新しい花嫁を貰うことが決まっていて、その花嫁の為にわざわざこうして隣国まで足を運んできたことをお忘れか。そのついでに違う女を口説いて帰ろうなどと、不義理にも程があるでしょう!」
「不義理なつもりなど、わしには毛頭ないぞ。妻達のことは平等に愛しておるし、そうでなくば皆を後宮に囲ったりせぬ。‥‥ああ、男の甲斐性を理解するには、お主はまだ歳が足らぬか」
「子供扱いしないで下さい。とにかく、彼女を連れて帰る事など、絶対にできませんから」
「それは、お主の決める事ではないよ。この娘の身の振り方を決めるのは、この娘自身だろう。それとも、皇帝としての権限でも振りかざすつもりかい?」
「ーーーーーっ!」

 ああ言えばこう言う隣国皇帝の話術に苛立ち、顔を顰めたルドヴィークを見兼ねたように、それまで沈黙を守って従順に侍っていた菫が口を開いた。

「ーーーーフランディース様」
「何だね。お主は声まで愛らしいな。わしの側で、ずっとさえずっていてはくれぬか?」

 愛おし気に目を細めて頬を撫でて来たフランディースに、菫は近しい者なら明らかに愛想笑いと気付く表情を貼付けて、真っ直ぐに向き合った。

「身に余る光栄なお話ですが、私はパトラーシュにお伴するわけにはいきません」
「何故だ? この先、何不自由ない生活を約束する。もちろん、侍女などでは味わえぬ贅沢もさせてやれるぞ?」
「申し訳ございません」
「そなたの親や後見人が煩いというなら、わしが直々に話を付けよう。何も心配することはない、安心してわしの元においで」
「いいえ、フランディース様」

 どうあっても首を縦に振らない菫に、大いに調子を崩されたらしいフランディースの戸惑った姿は、なかなかに滑稽であった。
 これまでの人生において、口説いて落ちない女はいなかった彼にとっては、頑に拒む少女は異質な存在であり、到底許容出来るものでもない。
 男としてのプライドと意地にかけて、何としても彼女を連れ帰りたいと躍起になった彼が、掴んだ両手に力を入れる前に、菫はするりと己の手を取り戻すと、すっと一歩後ろに退いてはそれを腹の前で緩く組んだ。


「申し訳ございません。私は、既に嫁いだ身でございます」
「――――何と‥‥! それはまことか、ルドヴィーク」
「‥‥‥‥本当です」

 菫が身を引いて作った隙間に、ルドヴィークは素早く我が身を滑り込ませ、彼女を己の背に庇うようにして、驚きに金の瞳を見開くソファの上の客人を冷たく見下ろした。
 長兄と彼女が睦合っている光景を前にしても、微かにちくりと痛む胸を誤魔化しつつ見守れる位には落ち着いてきたルドヴィークだったが、兄以外の男が菫の身体に気安く触れるのは我慢ならない。
 如何に無類の女好きといえど、さすがに人妻と聞いては諦めるしかないだろうという常識的な考えは、しかしその後、パトラーシュ皇帝の口から出た言葉に裏切られることとなる。


「心配ない。グラディアトリアの法律でも、離婚は認められている。ーーーーそうだな? ルド」
「なっ‥‥‥!?」
「もしも、夫君が慰謝料を要求するようなら、わしが代わりに払ってやろう」
「フランっ! 勝手なことを申されるな!!」

 気に入った侍女が既婚であると知って、がっかりと肩を落とすかと思われたパトラーシュの皇帝は、逆に獲物を狙う猛禽類のような瞳に危険な光をたたえ、腰掛けていたソファから立ち上がって、彼女を背に隠したグラディアトリアの皇帝にずいっと迫った。


「これほどまでに可憐な妻を娶っておいて、それを外で働かせようという夫の気が知れぬ。余程、金に困っていると見える」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。」

 ええいっ! その夫君の資産は、皇帝のそれを軽く超える、当国一の大金持ちだっ!!

 と、ルドヴィークは叫び出したくなるのを、懸命に我慢した。
 そういえば、長兄ヴィオラントは、愛妻が侍女の真似事をしていることを知っているのだろうか。
 否、そもそも、知っていれば許すはずがないのではないか。
 ルドヴィークの悪い予感は、最近頓によく当たる。


「わしならば、始終側に置いて愛でるものを。他の男に仕えるなど、絶対に許せん」


 金の瞳に小さな少女の姿を捕らえ、本気で口説き落とす体制に入ったフランディースは、扉の側に立っていた皇帝の第一騎士が、主人の許可も取らずに扉を開けた事にも、そして彼が笑みを浮かべて、部屋の中にとある人物を招き入れたという事にも、気付いてはいなかった。




関連記事
スポンサーサイト

Comments

Post A Comment

What's New?