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五臓六腑

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如何にして花は咲く(前編)

 アルフレッド・ロ・パトラーシュは、豊富な資源に潤う大国パトラーシュの皇太子である。 本来なら母方の血名を名乗るはずが、父である皇帝フランディース・ロ・パトラーシュの血名が使用されているのは、アルフレッドの母親が正式に世間に公表されていないからだ。 現在、彼は成人を翌年に控えた十五歳。 身分を隠され離宮で生まれ育ち、九年前、六歳の時に正式に皇太子として王宮に迎え入れられた。 だからといって、それま...

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如何にして花は咲く(後編)

「お部屋はどのあたりですか? 私も今日この城にお邪魔したばかりで、ご案内できる自信がないのですが……」「うん、気にしないで」 父達が酒盛りをしているであろう部屋の灯りが、僅かにおとされた。 もう、グラディアトリア皇帝の結婚を祝う前夜際はお開きになったのかもしれない。 夜も更けたこんな時間に、見知らぬ相手とはいえ淑女をいつまでも迷わせているわけにもいかず、アルフレッドは夜顔から視線を外して、黒髪の娘を...

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最果てを求めて1

 金色の髪に深い青い瞳のその人は、女神のように美しいかんばせに慈しみの笑みを浮かべ、自分の前に並んで経つ幼い者達を交互に見やった。「可愛い可愛い坊やたち。探究心と好奇心を抑えてはなりませぬ。疑問に対して無邪気に対峙できる子供のうちに、たくさんのことを経験していらっしゃい」「はい、おばあさま」「いってきます、おばあさま」 彼女をキラキラとした眼差しで見上げるのは二人の少年。 白銀の髪に紫の瞳という稀...

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最果てを求めて2

 今度の隠し通路は、先に通った二本に比べて格段に長かった。 しかも、上りも下りもあって道は平坦ではなく、暗闇にいくらか目が慣れようとなかなか困難な道のりであった。「こりゃ、後宮の外に続いてそうだな」「迷わない?」 いつも何にでも積極的でぐいぐい引っ張って行くのがシオン、気が弱そうで優しげな雰囲気だがとことん付き合いがいいのがスオウ。 普段は別々の世界で生活している彼らだが、誰よりの仲がよく気が合う...

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最果てを求めて3

 騎士団長と副長の間に生まれた、まさに騎士のサラブレットともいえる少女は、残念ながら父母のように騎士を目指してはいないようだ。 オルセオロ公爵家の一人娘アリアーネは、本を読むのが大好きな少女で、自身も将来物語を書くような仕事に就きたいと思っている。 この日も彼女の登城の目的は、王城にある図書館で本を探すことだったようだ。 母ミリアニスは、こちらはゆっくりと巨大パフェを食べ切って、皇太后の第一騎士と...

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最果てには届かぬ

「だめだよ、まずいよ、やめようよ!」「なによー、意気地なし。ママはシオン君をそんな軟弱な子に育てた覚えはありませんよっ」「オレだって、スミレちゃんに育てられた覚えはありませんよっ」 そう言ったシオンの柔らかなほっぺを、「なまいきぃ」と左右にぶにーっと引っ張ったのは、彼のキュートな母上だ。 息子の目から見ても、お人形のように可愛らしい彼女は、シオンの父の宝物でもある。 そんな母スミレとシオンが、何を...

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アロワナ

●少年と少女の不思議な出会いと、ゆるやかな心境の変化。...

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