五臓六腑

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『蔦王』

蔦王オリジナルラブファンタジー小説小説家になろうにて連載していました。アルファポリス様にて書籍化されました。全国の書店及びオンライン書店にて発売中です。現在二巻書籍化進行中です。...

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『蔦姫の箱庭』

蔦姫の箱庭『蔦王』の番外編集。小説家になろうにて公開中http://ncode.syosetu.com/n0638n/一応R指定ですので、15歳未満の方はご遠慮下さい。...

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『小話集』

小話集『蔦王』のから派生した、小話集。ネタバレを含みます。...

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蔦姫の王宮行脚1

「クロちゃん、こんにちは」「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」「クロちゃん? おねえちゃまですよ」「‥‥‥‥‥‥どこから、突っ込めばよいのやら‥‥‥」こんこんと執務室の扉をノックする音に、部屋の主であるグラディアトリアの宰相クロヴィス・オル・リュネブルクが誰何すると、重厚な扉の向こうから返って来たのは小鳥の囀りように愛らしい声。クロヴィスが慌てて開けた扉の向こうには、思い描いた通りの客人が佇んでいた。肩に付くか付かないか程度...

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蔦姫の王宮行脚2

さすがに大国の長たる皇帝陛下の執務室の前には、見張りが立っている。それでも、甲冑を着込んだり槍を構えたりという物々しさはなく、彼らの制服ともいえる騎士服を纏い腰に剣を携えて、宰相室よりも更に重厚な扉の左右に陣取っていた。皇帝陛下の周囲で勤務する近衛騎士の間で、菫の認知度はなかなか高い。この時間が当番の近衛の二人も、黒髪の小柄な少女の正体を知っていたらしく、ひとり廊下を渡ってきたのを見付けても警戒す...

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蔦姫の王宮行脚3

宰相クロヴィスが後宮にある皇太后陛下の私室を尋ねると、麗しき女主人は日の当たるテラスで盤上遊びに興じていた。既に歳は四十を過ぎているというのに、彼女の女神の如き美しさは衰えを知らず、豪奢な金髪は日差しに溶けてまるで太陽の光そのもののようだ。染み一つない白く優美な手に顎を乗せ、赤く艶やかな唇を笑みの形に吊り上げて、サファイアのように青い瞳は楽しそうに盤の上を眺めていた。対して、その向いの席に長い足を...

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蔦姫の王宮行脚4

その日、カーティス・ルト・シュタイアーは休暇をいただく予定だった。しかし数日前、急遽新しく騎士を迎え入れる旨を団長より知らされ、新人は彼が隊長を務める第一騎士隊に配属が決まり、この午前中に様々な手続きに付き合わされたのだ。現在シュタイアー家の当主は父であるヒルディベルだが、あと2,3年もすれば彼も引退し、長男であるカーティスが爵位を継ぐ事に決まっている。今は寄宿舎に部屋を貰って寝起きし、父母にも年老...

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蔦姫の王宮行脚5

皇帝の執務室、デスクの後ろに位置する窓からは、階下の騎士寄宿舎の玄関がしっかりと見下ろせた。菫の訪問に驚いた様子だったシュタイアー家のカーティスが、他の騎士達から彼女を守るように足早にその場を離れようとしたところ、いやに身形の整った少年騎士が行く手を阻んだ。その様子を階上から眺めながら訝し気に眉を顰めたルドヴィークに、傍らの兄クロヴィスは「ああ‥‥」と思い出したように溜息を吐いた。「ロートリアスの馬...

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ドレス

※本編第三章「父と娘」1と2の中間設定「ところで、兄上。コンラートでリヒト殿下と何かありましたか?」「リヒト?」「スミレ曰く、金髪髭男なうちの兄だな」馴染みのレイスウェイク家の食卓を前に、皇帝ルドヴィークは思い出したように兄に問いかけた。「いえ、昨日の夕刻、手紙が届きましてね。久しぶりでしたので驚いたのですが、さらにその内容がどうにも‥‥」「うん?」ルドヴィークも、隣国の王兄リヒト・ウェル・コンラー...

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取引

「ヴィーさん、ヴィーさん、取引しねぇ?」「‥‥いきなりだな、リョウ君。一応、内容を聞こうか」「俺な、菫と保育所から小学校‥‥え~と、歳でいうと零歳から十二歳まで一緒だったのな。だから、ヴィーさんも優斗兄も知らないあいつを、結構知ってるんだ~」「‥‥‥何が、言いたい?」「そんな怖い顔しなさんなって。別に、それを自慢しにきたんじゃねぇから」「それで?」「俺、今日いいもの持ってきたの。“写真”って分かる?」「精...

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プリンセス・パフェ

「くーろーちゃん。あーそーぼ~」「‥‥‥‥‥‥‥‥」「なんだ、いるんじゃん。いるんなら、“いーいーよ~”って返すのが礼儀だよ」「‥‥‥‥残念ながら、就業時間内ですので、お子様の相手はできないのですが」「あ、そう。お子様の相手はしなくてもいいから、おねえちゃまの相手をしなさい」「‥‥‥‥‥‥‥‥」「はいはい、文官の皆様、こんにちは。あ、次官さん、今日も筆圧高くって素敵ね」「‥‥‥‥仕方ありませんね。ああ、もうこんな時間でした...

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節分

「スミレ、兄上から預かりものだぞ」「いらない」「そう言うな。何やら、そなたの国に古くから伝わる風習で、厄よけの意味があるそうではないか」「いいの、ヴィーは何でもかんでも日本の風習に感化されなくても。お兄ちゃんはただの行事好きだから、いちいち付き合わなくてもいいの」「そう言って、そなたが受け取ってくれないと泣きつかれて、あまりに哀れなので受け取ってしまった」「もー」「兄上をあまり邪険にするものではな...

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二月十五日

グラディアトリア四大公爵家の筆頭ともいえる大貴族、シュタイアー公爵家の二人の子息は、共に王城の騎士団に属し、それぞれ第一・第二騎士隊の隊長を務めるエリートである。息子達が自らの努力で着々と出世していく姿を、その父母である公爵夫妻は誇らしく思いながらも、城の寄宿舎に入り浸りでなかなか実家に帰ってこない彼らに、寂しい思いも隠せなかった。男の子供は、大きくなれば忽ち手を離れていってしまって、本当につまら...

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猫的性格

※2月22日、「にゃんにゃんにゃん」の日に因みまして。いつぞや、とある事情で検索して浮かび上がった、「猫的性格」から数個を抜粋。主人公の行動に当て嵌めて小話にしてみました。「ルド~、ルドちゃ~ん。おねえちゃまと遊ぼ~」「なっ‥‥? ス、スミレ!?」「おねえちゃまはお菓子を作ってきましたの。ルドちゃんも欲しい?」「‥‥そ、その呼び方は、やめろ。そもそも、今は執務中だ。お前と遊んでる時間は‥‥」ーーーーー自...

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雛祭り

「遂に来た。待ちに待った、この日が」「なに? おにーちゃん、今日は笑顔が黒いよ」「スミレが悪巧みしている時の笑顔にそっくりだが、残念ながらそなたがしても可愛くはないな」「可愛くなくて、結構! っていうか、あんたが余裕ぶっこいてられるのも、ここまでだぞ!」「おにーちゃん、酔ってんの?」「こんな時間から酔っぱらって、いい身分だな」「俺は酔ってなんかないぞ。けど、この後勝利に酔いしれる準備ならできている...

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朗報

「ねえねえ、相談なんだけどさ。子供の名前、何がいいと思う?」うららかな陽気が睡魔を誘う昼下がり、レイスウェイク家のテラスに集まった皇族ブラザーズを前に、菫はそう唐突に切り出した。「こっーーー? こっこっこっ‥‥!?」ショックのあまり、餌を突つく鶏のような言葉しか出て来ないのは、現在グラディアトリアの最高権力者、皇帝ルドヴィーク。「‥‥‥‥‥そうですねぇ」驚きに一瞬目を見張り、菫のあどけない顔と膨らみのな...

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蔦姫の余興1

Happy Halloween「で? 今日は一体何処に隠したんだい?」「‥‥‥‥何をでしょうか」 そろそろ長男のカーティスに家督を譲る準備をしていると噂の、グラディアトリア四大公爵家の一つ、現シュタイアー公爵ヒルディベルは、レイスウェイク家の侍従長サリバンに客間に通され、当主であり実は血を分けた息子でもあるヴィオラントの顔を見るなり、冒頭の台詞を口にした。 それに対し、ヴィオラントは常通りの無表情を保ったまま、少々...

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蔦姫の余興2

Happy Halloween「それで、その“ハロウィン”というのは、実際はどういう祭りなんだい?」 菫の傷の処置が済むと、ヴィオラントは彼女を連れ、シュタイアー公爵を促し客間に戻った。 念願の愛娘手作りクッキーを堪能しつつ、公爵は興味深い異世界の祭りについて質問をする。「う~ん、ほんとに詳しいことは知らないだってば。でも確か、ハロウィンの夜には死んだ人が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出るって外国では言われててね。...

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蔦姫の余興3

Happy Halloween「‥‥‥‥‥兄上‥‥」「‥‥‥これは、また。似合い過ぎですね」 日が落ちる直前に連れ立ってやってきたのは、グラディアトリアの皇帝ルドヴィークと、宰相にしてリュネブルク公爵クロヴィスだ。 護衛騎士として同行した騎士団長ジョルトは、シュタイアー公爵夫人の甥オルセオロ公爵としても、パーティに招待されている。 別室で素早く着替えてきたらしい彼らは、会場に入るなり異彩を放つ長兄に目を奪われる事となる。...

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蔦姫の余興4

Happy Halloween「肝試し?」 各々料理に舌鼓を打ち、良い感じにアルコールも入って、場が盛り上がってきたのを見計らい発表されたのは、シュタイアー公爵邸を舞台とした“大肝試し大会”である。 二人一組をくじでランダムに決め、それぞれ別々のアイテムを持って帰ってくるというもので、スタートは玄関、ゴールは今居るパーティ会場。 この後屋敷中の灯りが消され、挑戦者は提灯のように棒に吊したジャクオーランタンの灯りだ...

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蔦姫の余興5

Happy Halloween シュタイアー公爵と皇太后兄妹の地図には、棒が付いた星の絵が描かれていた。 描いた本人であるイメリア夫人に、これは何かと尋ねると、菫曰く魔女の杖・スターワンドであると言う。 これも柄の部分に物が入れられるようになっていて、見れば分かると夫人はにっこり微笑んだ。 一方、ヴィオラントとルドヴィークの地図には、黒い蝙蝠の絵が描かれており、それも小物を入れられるようになっているらしい。 各...

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蔦姫の余興6

Happy Halloween「‥‥‥‥ヴィー、何だと思う? あれ‥‥」「ふむ、灯りだな。我々が持っているのと同じようなランタンだろう」「‥‥‥‥誰が持ってるの? もう、ヴィー達以外ここ通ってくる人いないはずなのに‥‥」「ああ、そうなのか?」「‥‥‥‥‥‥‥‥」 吸血鬼や妖怪の類いを題材にした物語は、この世界には存在しないが、ゴースト所謂幽霊なるものの登場する物語は、少なからず書かれている。 ヴィオラントや現実主義の権化であるクロ...

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蔦姫の罠1

 とんとんと、扉をノックする音が聞こえた。 部屋の主に代わってそれに応対したのは、扉の際に控えていた皇帝陛下の第一騎士ジョルト・クル・オルセオロ公爵であり、つまりはこの部屋は、当代の皇帝陛下ルドヴィーク・フィア・グラディアトリアの執務室なのである。 最強の騎士とうたわれながらも、誰よりも穏和な顔つきのジョルトが開いた扉から、お茶の用意を乗せたワゴンを押して入ってきた人物を見て、それまで疲れたような...

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蔦姫の罠2

「ーーーー同感だな」 けして大きくはないというのに、その声には誰もを振り向かせる威力があった。「私とて、妻を一時も側から離したくはないし、他の男に仕えるのを許した覚えもないのだがな」「‥‥‥ヴィオラント?」「久しいなフランディース。貴殿は相変わらずのようだ。‥‥こちらへ来なさい、ーーースミレ」 一声でその場を支配した来訪者は、皇帝ルドヴィークの長兄であり、腐敗に混沌としかけた祖国を荒療治で建て直した稀...

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蔦姫の罠3

 そうこうしている内に、菫が何か耳打ちしたのか、不承不承の様子ながらヴィオラントが扉から離れて、一同のいる所までやってきた。 そうして、当たり前のように席を勧めた弟皇帝に短く礼を言って、少女を抱いたままソファに腰を下ろす。「何だ、関係ないのではなかったのか?」「関係ないから口を挟まないけど、あなたが義弟君たちの手を煩わしそうだから、見張っとく」「ふん、それはそれはお優しい義姉上殿だな。どうだ、お主...

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追伸:蔦姫の罠

『蔦姫の罠』の翌日「お邪魔します、兄上。スミレ、ほら、昨日約束したお菓子。渡し忘れていたので持ってきましたよ」「わ~、クロちゃん、そういうところホント律儀ね。よ~しよしよし、お姉ちゃまがお茶を入れてあげよ」「‥‥‥クロヴィス、そなたも忙しい身であろう。わざわざ菓子の一つ、使いの者に任せればよいものを」「いえ‥‥今回のこと、少々私も考えが足らず、兄上に不快な思いをさせてしまったことが気になっておりました...

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乙女の秘密

「ミリアンちゃん、ミリアンちゃん」「うん? どうしたのスミレ?」「あのね、あのね、おねえちゃまのお願い、聞いてくれる?」 妊娠を期に騎士団を休職中のミリアニスは、実は自宅であるオルセオロ公爵邸がレイスウェイク家に近いこともあり、頻繁に菫を訪ねるようになっていた。 剣を振り回す職業に似合わず、温和で穏やかな性格のミリアニスは、兄ヴィオラントにとっても、愛妻にくっ付けておいて一番安心な人材だったりする...

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蔦姫の奇跡 前編

 はっと気がつくと、菫は緑に囲まれて雲一つない青空を見上げていた。「‥‥‥あれ?」 自分は確かに、今は我が家となったレイスウェイク家の庭にいた記憶があるのだが、しかし周りをよくよく見渡すと、そこは菫が愛する白髭のポムじいさんの縄張りとは、明らかに異なる場所であった。 手入れの行き届いた庭園であるには違いないが、日頃ポムとつるんでレイスウェイクの屋敷の隅々まで網羅している菫には、見分けるのは容易い事だ...

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蔦姫の奇跡 後編

「え~と、おそらく私は通りすがりの幽体ですので、お気になさらず。どうぞどうぞ、も一度昼寝でもぶっこいて下さい」「幽体? なにを馬鹿げたことを‥‥。そもそも、人の憩いを邪魔したのはお前ではないか」 彼に、今幾つなのかと歳を聞くと、ひどく面倒くさそうにしながらも、一応答えてくれた。 なんと、菫の知る彼の末弟ルドヴィークと同じ、十八歳なのだという。 十八といえば、ヴィオラントが先代の崩御と共に玉座に就いて...

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蔦姫と年越し

 今宵は一年で一度だけ、どれだけ夜更かしをしても許される日である。「ーーーと、スミレが言うのだが、どういう理屈か教えて頂きたい」 菫の生まれ育った世界は、本日は一年の最終日。 12月31日、大晦日である。 一週間程前にロサンゼルスから帰ってきた両親と、優斗と真子の新婚夫婦は、年賀状の投函も大掃除もお節料理の用意も済ませ、すっかり修繕改装が済んだリビングに揃って寛いでいるところだった。 菫の幼馴染み...

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